日別アーカイブ: 2023年9月19日

人生の一冊:「ひとりずもう」(さくらももこ)

これが人生の一冊だ、という本に出逢えることは、本当に幸運なんだろう。

しかも、月に2〜3冊しか読まない程度の読書量にもかからず、だ。何度考えても、自分はラッキーだと思える。

さくらももこさんの「ひとりずもう」。僕の人生の一冊は、これだ。

僕には珍しく、何度も再読している。そして、再読するたびに、感動を覚える。

さくらももこさんは、「もものかんづめ」や「さくのこしかけ」など多くの代表作があるが、この本が一番だ。

ネタバレしたくないので、ざっくりと紹介すると、テーマは「青春」で、さくらももこさんの思春期から話が展開される。といっても、周りが思春期だけど自分は…的な内容で、前半は、相変わらずの「ももこ節」で、素直におもしろおかしく読める。

物語の途中から、話が急展開。浮足立った段階から、文字通り、地に足をつける段階になって、ムードが一変する。そして、紆余曲折を経て、一つの解にたどり着くのだけれども、その場面が最高に印象的。

(珍しくも)数度の挫折を味わったさくらももこさんが、それでも挑戦し続けるという展開。自分でも「自分にこれだけのガッツがあったなんて信じられない」といった表現を使うほど、打ち込んだシーン、そして、その結果。

それらの情景や心情が、ストレートに、しかし柔らかく伝わってきて、胸を打つ。

もともと、さくらももこさんの文章は本当に秀逸で、読み出した途端に、その世界にぬるっと引き込まれるのだが、なんと言うか、色鮮やかさがプラスさせれて、世界が広がって、時を忘れるのも忘れるくらいのレベルで読みふけってしまっていて、余韻が続いている時に、そうなっている自分に気がつく。

翻って、自分はそういう瞬間や、打ち込めるものがあるのか?出会っているか?と自問して、毎回、襟を正す。

そういう意味でも、良い本だと思うし、出会えたことに、今でも感謝しているし、感謝し続けると思う。