従来の購買行動フレームワークAIDMA。ただし、マーケター目線のもの。
AIDMAとは、消費者の「購買決定プロレス」を説明するモデルの1つだ。簡単に言うと、ある人があるモノを買うまでの流れ、をモデル化したもの。
- A(Attentin)→ 消費者が、その製品の存在を知る
- I(Interest) → その製品に興味を持つ
- D(Desire) → ほしいと思うになる
- M(Memory) → 記憶する
- A(Action) → 最終的に購買に至る
このように、購買決定プロセスをAIDMAに分解して、自分のターゲットユーザがどの段階にあるかを意識しつつ、コミュニケーション戦略を練る、という使われ方をする。
【出典】グロービス経営大学院
このモデルはとても有名で、多くのマーケター(マーケティングを仕事にしている人)は必ずと言っていいほど知っているし、意識しつつマーケティング活動を実施している。
ただ、Googleの調査によって、最近の消費者の行動が、AIDMAに合致しないトレンドがある、ということが分かってきたようだ。
購買には検索を利用するケースが主
消費者がその商品を知るきっかけは、60%が検索。以外にも、専門サイトやSNSは13.2%、7.8%とそこまで多くなかった。(個人的には、SNSの広告で知るケースも多い気がするので、この数値の信憑性は微妙だと思うけど)
どちらにせよ、まだ検索は、多くの消費者に使われているし、購買のためにも利用されているということが分かる。
Googleとヴァリューズが連携して分析
180万人分のデータから7221人のデータを抽出、そしてさらに、そこから50人を選出して、検索ログデーだを最大2年分読み解くという調査を実施した(対象者には事前に許諾を得ている)。
結果、冒頭のように、今まで常識として(マーケター界隈が勝手に思っていた?)AIDMAなどの購買決定プロセス=一本道のとおりに、消費者は購買プロセスをたどっていない、ということが分かったようだ。
参考サイトの文章が秀逸だったので、そのまま引用したい。
つまり多くの場合で、情報探索行動は、現れたり消えたり、期間を空けて思い出したようにまた現れたり、また「このタイミングでなんでまたそれを調べるの?」「結局、何も考慮していなかったそれを買っちゃうの?」など、マーケター側からするといわば“ちゃぶ台返し”のような行動が多発していることがわかってきたのです。実はこういった不規則な情報探索行動は、日本のみならず、アメリカ、ヨーロッパにおける調査の結果からも同様な発見がなされています。
実を言うと、彼女は今回、1 年半ほど旅行に関する情報探索行動を取っていましたが、もともと 2017 年にハワイに行ったときに、すでに新婚旅行はハワイと決めていたとのこと。つまりその時点で一度心に決めていた、つまりパルスしていたとのことでした。その上で彼女は、結局最後までこの気持ちを貫き通したわけです。検索ワードだけを見ると、同じような情報探索行動をしていたと思えるギリシャやバリ島も、ハワイの決断を後押しするためだけに行われた情報探索行動だったようです。
【出典】【Think with Google】観察してわかった 5 つの特徴、消費者も気づかない「実はだいじ」が大事
情報探索をかき立てる8つの動機とバタフライ・サーキット
上記のような個別分析から、無秩序な情報探索行動に人々をかき立てる理由として、8つの潜在的な動機が見えてきたとして、以下を挙げている。とても興味深いし、どれもリアルに感じられて納得できるものばかりだ。
これって、生物としての欲求レベルに収束する、かつとてもシンプルなものな気がする。
AIDMAの購買決定プロセスが従来、かつほぼ正解だとすると、比較検討がプロセスに含まれているだけ高等な意思決定プロセスとも言えないくもない(強引?)だけど、この8つのカテゴリはどれもシンプル。
そのシンプルな動機から、パルス的に、即ち瞬間的に購買に至っているとしたら、情報過多の時代なので、短時間でシンプルに決めた方が効率も良いし、脳も対処しやすい、というかそうじゃないと対処できないので、より本能的に物事を決定するトレンドが強まっている、と考えることができるのかもしれない。
【出典】【Think with Google】ギリシャ? バリ? はたまたハワイ? 新婚旅行の検索行動から見えた情報探索行動のリアル:バタフライ・サーキットと 8 つの動機
さらに、この8つを「さぐる」と「かためる」の2つに分けてGoogleが考察をしていて、その2つが不規則に入れ替わったり繰り返したりする行動特性があることを導いていて、「バタフレイ・サーキット」と名付けている。
要するに、AIDMAとシーケンシャルに購買決定プロセスをたどっているのではなくて、「さぐる」と「かためる」だけでも、行ったり来たり、繰り返したりを得て、突然、パルス的に購買決定し、その後も、「さぐる」と「かためる」の検索行動を繰り返している、ということが分かったようだ。
本当まったく、人の行動っておもしろいし興味深い。中には、自分の行動を忘れている人もいたようだ。それぐらい、無意識に近いレベルで人は行動しているものもあるし、逆に、データから行動を把握できている、というGoogleの分析もすごいと思った。
バタフライ・サーキットの5つのパターン
さらに、このバタフライ・サーキットを5つのパターンから整理・分析している。文章が多いが、内容がとてもおもしろかったので紹介したい。40%程度は端折っているので、全文は参考サイトを見ていただきたい。
この他、①車、②不動産、③スキンケア、④旅行、⑤生命保険の産業分野のそれぞれで、5つのパターンの割合も整理されていて、とても勉強になる。
- 【全方位型】
- 購買決定まで満遍なく積極的に情報探索して、かつ「さぐる」と「かためる」がバランス良く現れる
- 【主観型】
- 積極的に情報探索するが、全方位型に比べて「みんなに教えて」、「にんまりさせて」が極端に少ない。
- モバイル検索に頼る傾向があり、日頃からスマホを使った気晴らし検索をしている結果として、ピンときた商品にパルスして購買を決定。その後、その商品のスペックなどを調べ始める。
- 自分がいいと思えば、他人の評価はあまり気にしない
- 【慎重型】
- 商品購入を思い立ってから検討している間、網羅的な情報探索をし、購買が決まると、最後には実店舗に出向く
- 友人や家族、店舗スタッフの意見やオススメを聞くことが多く、情報ソースをオンラインだけに頼らないトレンドがある
- 情報探索は「学ばせて」「解決させて」の割合が比較的大きい
- 【真面目型】
- 慎重型の逆で、オフライン→オンライン的な行動が多い。雑誌や口コミといったオフライン情報に触発されて購買意欲がパルスし、そこから本格的な情報探索を始める
- 情報探索も「学ばせて」「解決させて」「心づもりさせて」といった動機が多く、客案的な情報や機能性を知りたがる。
- 自分の購入すると決めた商品に関してしっかり学んでおきたい、さらには入手した後に想定される問題にもあらかじめ対処しようとするトレンドがある
- 【瞬発型】
- デジタルでの情報探索で商品やサービスを発見することをtな惜しみ、そこで得たインスピレーションに従い、これ!と思ったら一気に専門サイトなどを訪問し、一定の確信を得て購買する
- 一方、購入決定後に、その決定の正当性を気にするトレンドがあって「心づもりさせて」「答え合わせさせて」の情報探索が多く見られる
- 思い立ちから購買決定までが、もっとも瞬発的に行われる
アナログ回帰もしくは、アナログありきのデジタルとの融合が今後のカギになるのでは?
この記事を読んで思ったのは、情報過多と価値観の多様性が進む現代と将来においては、アナログが重要になるだろう、ということだ。
参考サイトの最後にも出てくるが、バタフライ・サーキットがONになるトリガはとらえどころがないが、例えば、脳機能でいうとRASであったり、心理学用語でいうところのカクテルパーティ効果であったりと、人間本来の機能に由来している要素を鑑みた方が得策だと思う。
僕はApple信者だが、その理由は「アナログとテクノロジーの融合と調和を、デザインの根幹としているから」だ。
生活に溶け込むような、そもそも生活の一部だったように使えるデザインになっているのは、その根幹があるからと思っている。
人間の脳構造や機能や原始時代からさほど変わらないらしい。対して、テクノロジーの進化は著しい。ハードウェアとしての人間はついていけてない。
そういう現代と将来において、人間本来を思いつつ、一人ひとりが満足行く人生を送るためにも、アナログとデジタル(テクノロジー)の調査と融合を考えていく必要があるだろうし、考えていこうと思う。
参考サイト
【Think with Google】従来の購買行動はもう当てはまらない、情報探索行動を分析してわかったこと:バタフライ・サーキットと8つの動機