日別アーカイブ: 2022年2月9日

「ひとりずもう」を読んで。

さくらももこさんの「ひとりずもう」は、僕の人生の一冊だ。

再読することは滅多にないが、ひとりずもうは、何回も読み直している。

ふざけた文体。

さくらももこさんと言えば、その独特の作風が挙げられるだろう。斜に構えた感じというか、シニカルさも満点に、多くの人が言えないような事もズバズバ言い放つ。

それは、アニメ「ちびまる子ちゃん」を見ていても分かると思う。あの内容が、もう少し鋭角になったような表現が多いと、個人的には思っている。

「自分の人生は自分のもの。人の目を気にしなくてよい」という感じが伝わってくるから、一見ひどいなぁと思うことも、よくよく考えると真理をついた内容であったりするので、あなどれないというか、表面的にだけ捉えないように、と思っている。

テーマは青春。

「もものかんづめ」、「さるのこしかけ」、「たいのおかしら」と読んできたが、どれもFunnyという意味でおもしろい内容ばかりだった。

特に、もものかんづめの「メルヘン翁」は、故人の表現の仕方に、幼心ながら衝撃を受けた。笑い転げたものだ。

「ひとりずもう」も前半は同じようなテイストだ。さくらももこさんが小学校→中学校→高校→と進んでいく中で、思春期を迎え過ごしていく心情を綴っている。ここも、さくらももこワールド全開という感じ。

ただ、後半は異なる。というか、観点や目線や考え方・捉え方は同じなのだが、自分の進むべき道、進路や将来について彼女なりに真面目に考えているからだ。

人それぞれ、将来について考える時期はあると思う。僕もあったし、日々考えている。

だからこそ、さくらももこさんがどう考え、そしてどういうストーリーで作家になったのか、その描写に心を打たれた。

特に、ターニングポイントとなるシーン。これまでどの小説やマンガや書籍を読んできたが、あれだけ表現・色彩豊かに、かつストレートに描写できている文章を読んだことがない。

それぐらいの衝撃だったし、胸を掴まれてしまった。自分にも同じシーンが訪れてほしいと、渇望した。

文章を書く、という才能。

さくらももこさんは、文章を書くことが本当に好きなのだろうと思う。才能もあるかもしれないが、ごくごく自然に、呼吸をするように文章を書かれていたのではないだろうか。

だから、読む方も肩肘張らずに吸い込むことができて、はははと笑ったり、考えさせられたり、自分に置き換えたりを、無意識にできるのではないだろうか。

作家は他にもたくさんいらっしゃるが、このような文章をかけるようになりたいと思ったのは、さくらももこさんだけだ。

いろいろな意味で魅了される「ひとりずもう」。これからも読み続けるのだろうと思う。